その日は私にすれば吹雪だったのですが、地元の方にはいつもの雪模様で、白川郷の観光には最高の、お天気だったようです。
橋を渡って集落の中に入り、最も大きいと言われる長瀬家を見学しました。
一度は観たいと想っていた合掌造りを目の前にして,本当に感激しました。
何よりも周囲の雪景色に溶け込むような、建物の外観が素敵です。逆らうでもなく、媚びるでもなく、ただ馴染んでいるのです。遠くから観ると、ひっそりと隠れている様でもあり、近ずくと雪を被りながら、厳然と佇んでいる様でもあるのです。
五層になっている建物内部は、三角形の空間を巧みに活用し、広いうえにとても合理的な構造で、今までの建築に対する私の感覚とは、大きく異なったものでした。
何よりの驚きは、大きな屋根を形作る丸太類が、“ねそ”と呼ばれる、縄のようなもので結束されていた事です。
夏に反して厳しい環境になる冬には、大きな囲炉裏のある居間が、肉体的にも精神的にも家族に温もりをもたらせた事でしょう。寒さに弱い私ですが、短い期間ならこんな家で暮らしてみるのも…、という気になりました。
そして、これが厳しい自然の中で生きる為の、必要にして最小限なのか?それとも最大限なのか?という考えを持たせた住宅でありました。
それはともかく、世界文化遺産を選考する外国の委員達も、原始時代に使われたような縄や丸太でできた、 これらの建物群には、さぞかし驚いた事でしょう。そして、これからも永く維持されて、人が住み続ける事に。
現代に造られる物が、ともすれば華美であったり、鋭利であったり、また巨大さを誇る傾向にある時に、ここで素朴さや、人々が力を合わせたり、心を込めて作り上げた物の良さを、私に感じさせてくれました。
またいつの日か、ここに来たいなぁーと思いながら、駐車場へと急ぎました。
注) “ねそ”は「まんさく」という木の繊維をほぐし、撚りあげてロープ状にした物です。
景山 浩道