アレルギー・ぜんそくと住まい。カビとダニを減らす素材と換気の考え方
掃除はしているのに、症状が出る
「毎日掃除機をかけているのに、子どもの咳が止まらない」 「朝起きると鼻がむずむずする。この家に越してきてからのような気がする」
住まいのご相談をいただく中で、こうしたお話をうかがうことがあります。ご家族にアレルギーやぜんそくの症状がある場合、住環境が気になるのは自然なことです。
ただ、多くの方が「掃除の頻度」の問題として考えてしまいがちです。もちろん掃除は大切ですが、そもそもアレルゲンが増えにくい家にするという発想は、あまり知られていません。そしてそれは、リノベーションのタイミングでこそ手を入れやすい部分でもあります。
橿原市・香芝市・大和高田市・広陵町など奈良中南部エリアは、盆地特有の気候で湿度がこもりやすく、冬は底冷えして結露も起きやすい地域です。住まいの環境という点では、決して条件が良いとはいえません。
今回は、素材と換気という2つの切り口から、住まいでできることを整理します。
※アレルギーやぜんそくの症状には個人差があり、原因もさまざまです。住環境を改善することが必ず症状の軽減につながるとは限りません。治療や体調に関しては、必ず医師にご相談ください。この記事は、住まいの側からできる環境改善についてお伝えするものです。
住まいの中のアレルゲンは、どこから来るのか
一般に、住宅内でアレルギーの原因となりやすいものには次のようなものがあります。
ダニ(とそのフン・死骸) 寝具、カーペット、ソファ、畳などに潜みます。生きているダニそのものより、フンや死骸が細かく砕けたものを吸い込むことが問題になるとされています。
カビ 浴室や洗面所だけでなく、押入れの奥、家具の裏、北側の部屋の壁、そして床下にも発生します。カビの胞子はアレルゲンになるほか、カビを餌にするダニを呼び込むという連鎖も起こります。
ハウスダスト 繊維くず、ペットの毛、花粉、土砂ぼこりなどが混ざったものです。
化学物質 建材や家具から発散される揮発性有機化合物(VOC)やホルムアルデヒドは、いわゆるシックハウス症候群の原因物質とされています。
このうち、住まいの設計で最も大きく変えられるのがダニとカビです。そしてこの2つには、共通する弱点があります。
鍵は、湿度です
ダニは湿度60%以上で活発になる
ダニは乾燥に弱く、繁殖には60%以上の湿度が必要とされています。温度25〜30℃、湿度60〜70%の環境で特に活発になるといわれ、逆に湿度50%以下を保てば繁殖を抑えやすくなります。
カビも同様に、湿度の高い環境を好みます。そしてカビが生えた場所は、それを餌にするダニにとって好都合な環境になります。つまり、湿度をコントロールすることが、ダニとカビの両方に効くということです。
奈良の住まいで湿度が上がる場所
湿度は家全体で均一ではありません。特に注意したいのは次のような場所です。
- 北側の部屋や、家具を壁にぴったり寄せた背面
- 押入れやクローゼットの奥
- 洗濯物を室内干ししている部屋
- 床下(地面からの湿気が上がってきます)
- 結露が起きている窓まわりとその下の壁
奈良の冬の底冷えと結露については、掲載済みのコラム「奈良の冬はなぜこんなに『底冷え』するのか?」でも触れています。断熱が不十分だと壁の表面温度が下がり、そこで結露が起きてカビの温床になる——断熱とカビは、実はつながった問題です。
床下の湿気については、なら住宅診断LABOの住宅診断で状態を確認することができます。「なんとなくカビ臭い」という段階でも、原因が床下にあるケースは珍しくありません。
換気——24時間換気、動いていますか
実は法律で義務づけられています
2003年(平成15年)の改正建築基準法により、シックハウス対策として、原則すべての建築物に換気設備の設置が義務づけられました。住宅の場合、換気回数0.5回/h以上の機械換気設備が必要とされています。これは、2時間で部屋の空気が入れ替わる計算です。
ホルムアルデヒドを発散しない建材を使った場合でも、家具から発散される可能性があるため、換気設備は原則として必要とされています。
ところが、止まっている家が多い
ここが問題です。実際にお宅を拝見すると、次のようなケースによく出会います。
- 「寒いから」「音がうるさいから」とスイッチを切っている
- 給気口を家具でふさいでいる、あるいはテープで閉じている
- フィルターが何年も掃除されておらず、目詰まりしている
- そもそも24時間換気が付いていることを知らない
フィルターが目詰まりした換気システムは、能力が大きく落ちます。 高価な設備を入れていても、動いていなければ意味がありません。まずはご自宅の給気口と換気扇を確認し、フィルターを掃除してみてください。それだけで空気の質が変わることもあります。
なお、2003年より前に建てられた住宅には、この義務がかかっていません。築年数の経ったお宅では、リノベーションのタイミングで換気計画を見直す価値があります。
素材でできること
調湿建材を使う
湿度を機械だけでコントロールしようとすると、除湿機やエアコンに頼ることになり、電気代もかかります。そこで有効なのが、湿気を吸ったり吐いたりする建材です。
たとえばDAIKENの調湿壁材「さらりあ〜と」は、40〜70%の湿度域を保つように働き、トイレ臭・生ゴミ臭・ペット臭といったにおいの原因物質を吸着する消臭機能も備えています。壁材としても天井材としても使えます。
この建材については、掲載済みのコラム「湿度をデザインする。天井から変える快適な暮らしと、調湿建材『さらりあ〜と』の可能性」で詳しくご紹介しています。
床材を見直す
カーペットや畳はダニの温床になりやすい素材です。フローリングに変えるだけでも、掃除のしやすさは大きく変わります。
無垢材の床は、木そのものが湿気を吸放湿する性質を持っています。素足で歩いたときの質感も含めて、住み心地に影響する選択です。こちらは掲載済みの「自然素材の床で叶える、深呼吸したくなる住まい」もあわせてご覧ください。
化学物質の少ない建材を選ぶ
建材のホルムアルデヒド発散量には等級があり、最も発散量の少ない区分が「F☆☆☆☆(エフフォースター)」です。内装材を選ぶ際の一つの目安になります。
「掃除しやすい形」にする
見落とされがちですが、これが実は効きます。
- 巾木や見切り材の凹凸を減らす
- 段差をなくし、掃除機やロボット掃除機が入りやすくする
- 造作収納で扉付きにし、ホコリが積もる場所を減らす
- 家具と壁の間に隙間ができない設計にする
掃除の手間が減れば、掃除の頻度は自然に上がります。 気合いに頼らず、仕組みで解決するという考え方です。
すでにカビが出てしまっている場合
表面を拭き取っても、しばらくすると同じ場所にカビが戻ってくる——という経験をお持ちの方は少なくないと思います。カビは表面だけでなく、材料の内部にまで菌糸が入り込んでいることがあるためです。
こうしたケースに対して、フランでは根本的な解決を目指す方法をご提案しています。詳しくは掲載済みのコラム「奈良で『家のカビ』にお悩みの方へ。どこに頼めばいい?【根本解決FRS工法とは】」をご覧ください。
大切なのは、カビが出た原因(湿気の供給源)を断たなければ再発するということです。除去と、原因の解消は、必ずセットで考える必要があります。
間取りと動線でできること
素材や設備だけでなく、暮らし方の設計でも改善できる部分があります。
室内干しの場所を決める 洗濯物の室内干しは、部屋の湿度を大きく上げます。リビングに干すのではなく、換気設備や除湿機を備えたランドリースペースを設けると、湿気を1か所に集約できます。
玄関で花粉やホコリを落とす 玄関に上着を掛ける場所や、手洗い動線を設けることで、居室に持ち込む量を減らせます。
寝室の環境を優先する 一日のうち最も長く過ごすのは寝室です。予算配分に迷ったら、まず寝室の断熱・換気・素材から手を入れるという考え方もあります。
押入れやクローゼットに通気を確保する 壁一面に密閉するのではなく、通気口を設けたり、すのこ状の床にしたりすることで、湿気のこもりを防げます。
空気は、目に見えないからこそ設計する
住まいの快適さというと、間取りやデザインに目が向きがちです。しかし、そこで暮らすご家族が毎日吸っている空気の質は、それ以上に暮らしの土台になるものだと考えています。
フランが目指しているのは、目先の綺麗さやコスト面だけにとらわれず、住み心地にかかわる住宅性能や生活動線、住まい手の将来像まで見据えた住まいづくりです。断熱、換気、調湿、素材——これらは別々の工事ではなく、ひとつながりの環境設計として考えるべきものだと思っています。
また、創造工舎が運営する「なら住宅診断LABO」では、床下・小屋裏まで含めた住宅診断を行っています。カビや湿気の原因がどこにあるのかを客観的に確認したうえで、必要な対策をご提案できます。
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